桑畑の桑の根元までも濡らすような雨だ。この泥濘と雪解と冬の瓦解の中で、うれしいものは少し伸びた木の枝だ。その枝を通して、夕方には黄ばんだ灰色の南の空を望んだ。夜に入って、淋しく暖かい雨垂れの音を聞いていると、何となく春の近づくことを思わせる。